韓国アイドルは本当に日本で人気あるの？なぜ相次いで東京ドームでコンサートができるの？
韓流の不思議
先にお断りしておくと、私は特に韓流アイドルのファンというわけでもアンチというわけでもなく、ただただ標題について「不思議だなぁ」と思っている一般市民です。
韓流については、wikipediaでお勉強しました。
つまるところ韓流とは、「韓国が国家主導でコンテンツを輸出している非常に巧妙な文化政策の一環で、日本では冬のソナタをきっかけに韓国ドラマがブレイク、東方神起・KARAが起点となって韓国アイドルが怒涛のごとく日本市場を席巻し、2012年頃日韓関係の悪化に伴ってやや衰退したが、その後も有象無象の韓国アイドルが日本へドシドシ進出し、なんとなくそれなりの売り上げをマークしたり、結構な数のライブ動員数を記録している」という現象のようです。
とりあえず、「冬のソナタ」「東方神起・KARA」が日本で大ブームを巻き起こしたのは間違いありません。今思うと、迫害主義で有名な天下のジャニーズ事務所が、なぜ東方神起の活動拡大をボケーっと傍観していたのか解せませんが、いずれにせよ日本人は自らすすんで韓国ドラマ・アイドルを受け入れ、その新鮮な魅力に熱狂したと言えると思います。
その理由としては、日本のドラマ・アイドルのコンテンツの質が低下していたから、という点が大きかったのではないかと思います。ドラマにしろアイドルにしろ、国内での成功例を後追いするような似通ったモノが多く、なんとなくマンネリ感があったのだと思います。
しかし「東方神起・KARA」の成功を受けてドシドシ日本へ進出してきた後発の韓国アイドルについては、時流が悪かったこともあって、「少女時代」を除けば特に売れた印象がありません。
それなのになぜ、いまだに彼らはコンスタントに日本でCDを出してはそれなりの売り上げを上げ、わりと大きな会場でひょいひょいライブを行うことができるのでしょうか？
あなたたちのことよく知らないけど、なんで東京ドームでライブできるの？
東京ドームと言えば、日本人のミュージシャンが誰もが目指す夢の場所であり、日本有数の収容人数を誇るコンサート会場の１つです。
ちなみに、こちらが「東京ドームでコンサートを開催したミュージシャンの一覧」となっております。
東京ドームコンサートを開催したミュージシャンの一覧 - Wikipedia
ここから韓国のアイドルグループのコンサート記録を抜き出してみると、以下のようになります。
・東方神起（2009年7月4日・5日、（2011年7月13日）、（2011年9月2日 - 4日）、2012年4月14日 - 16日、（2012年8月4日・5日）、2013年6月15日 - 17日、2014年5月20日・21日・23日・24日、2015年2月25日・26日・4月1日・2日）
・JYJ（2010年6月12日・13日、2013年4月2日 - 4日、2014年11月18日・19日） 2010年6月12日・13日公演は、「JUNSU/JEJUNG/YUCHUN」名義の公演。
・スーパージュニア（（2011年9月2日 - 4日）、2012年5月12日・13日、（2012年8月4日・5日）、2013年7月27日・28日、2014年10月29日・30日）
・BIGBANG（2012年12月5日、2013年12月19日 - 21日、（2014年5月3日・4日）、2014年12月25日 - 27日、2015年11月12日 - 15日）
・KARA（（2011年7月13日）、2013年1月6日）
・2PM（（2011年7月13日）、2013年4月20日・21日）
・少女時代（（2011年9月2日 - 4日）、（2012年8月4日・5日）、2014年12月9日）
・SHINee（2015年3月14日・15日）
・EXO（2015年11月6日 - 8日）
自分が一般的感覚を持っているのかよくわかりませんが、自信を持って「知ってる知ってる！人気あるよね」と言えるのは、東方神起、JYJ、KARA、少女時代くらいです。辛うじてBIGBANGの存在は知っています。レコ大で新人賞とか取ってましたね。
しかも、私の中ではかなりブレイクした印象のあったKARAよりも、スーパージュニア、2PM、EXOとやらのほうが、日数的には多く公演を行っているようなのです。
スーパージュニア、2PM、SHINee、EXOのことは名前も知らなかったので、とりあえずyoutubeで検索してみました。
スーパージュニア：男性グループ。人数が多い。コミカル系か？
2PM：男性グループ。コミカル系か？
SHINee：男性グループ。若そう。
EXO：男性グループ。人数が多い。若そう。
驚くべきは、その映像再生回数です。EXOのPVなんか、平気で何千万回もカウンターが回っています。その他のグループも、日本語版のPVはごく普通の何十万～何百万回レベルですが、韓国語版はいずれも出すPV出すPV何千万回も視聴されているようです。
しかし、中国やアジアの国に積極的に売りに出しているわけですから、アジア圏で圧倒的な人気を誇っていると考えれば、そこまで不思議ではないかもしれません。ちゃんとアジアの市場を調査して、戦略的に進出して、着々と韓流ファンを増やしているんだろうなぁ、と逆に感心してしまいました。コメント欄も、世界各国の言語が並んでいてなかなか壮観です。
このあたりは、韓国政府の先見の明というか、センスが光っていますね。
確かに思い返してみれば、最近台湾に行ったとき、若者が集まるショッピングモール等でひたすらリピートされていたのは、韓国語の歌でしたね。そのときは何とも思いませんでしたが、すでにアジアの若者がシンパシーを感じるアイドルは、日本人ではなく韓国人になっているようです。
韓国アイドルは、世界的な音楽の流行の最先端をきちんとフォローしている
彼らの動画を見ていて強く感じたのは、「世界最先端の音楽をやっているなぁ」ということです。
パクリだと言われればそれまでかもしれませんが、「どっかで聞いたことあるなぁ」という音楽だということは、つまり今流行っているジャスティン・ティンバーレイクとかアリアナ・グランデとかアヴィーチーとかケイティ・ペリーとか*2、ニューエレクトロだのエレクトロハウスだのネオR&Bだのを研究して、「売れる」曲を分析して、それに沿って制作された楽曲を世に出しているということですよね。振付も流行をすごくよく研究しているし、実際韓国アイドルはほんとにめちゃくちゃダンス上手です。
世界のリスナーの需要を理解しているという点で、全体的にガラパゴスっぽいことが好きな日本に比べるとずいぶん野心的だね、と思います。
だから逆に言うと、そうゆう世界的流行があまり受け入れられていない日本において、韓流アイドルを好きな人は「少数派」なのではないかと思うし、有名外タレとして日本公演を行っているのだと解釈するとしても、ブリトニー・スピアーズやバックストリート・ボーイズほどのファンがいるとはとても思えないのです。
東京ドームの最大収容人数は、およそ５万人。伊達や酔狂で集まる人数ではありません。日本人アーティストで最近コンサートを行ったアイドルを見ても、一目瞭然です。
・Perfume（2010年11月3日、2013年12月24日・25日）
・Kis-My-Ft2（2011年8月28日、（2011年9月24日・25日）、2012年4月8日、2013年11月15日・16日、2014年11月7日 - 9日） CDデビューから18日目での公演は、CDデビュー後史上最速の公演）。
・AKB48 （2012年8月24日 - 26日、2013年8月22日 - 25日、2014年8月18日 - 20日）
いずれも、何十万枚～百何十万枚とCDが売れていて、テレビにも出まくっている面々です。あの天下のAKBでさえ、やっと2012年にたどり着いた場所なのです。
ポッと出の外国アイドルが（すみません）、おいそれとコンサートをできるような会場ではないはずです。
と言うわけで、実際にどれくらいCDが売れていて、どれくらいの人数を動員しているものなのか、ゆるーく調べてみました。
実感はないけどCDは売れていて、ライブに客が集まっているらしい
○ライブ動員数（2014年）
スーパージュニア：27.5万人（5公演）
2PM ：20.2万人（14公演）
SHINee ：25.4万人（33公演）
EXO ：31.8万人（14公演）
引用元：AKB48よりももクロが上 コンサート動員力2014 ：日本経済新聞
いずれも「各会場のチケットが完売したと仮定しているため、実際の「動員実数」とは異なる」とのことですが、東方神起は69.1万人動員で第7位、BIGBANGに至っては92.7万人動員でEXILEに次ぎ第２位を記録しています。
どうやら、韓流アイドルは私の想像を遥かに超えた、とんでもない集客力を誇っているようです。
では、CDの売り上げはどのくらいあるのでしょうか？
○CDの売り上げ（最新／初週）
スーパージュニア：6万5千枚くらい
2PM ：10万枚くらい
SHINee ：13万枚くらい
EXO ：まだデビューしてないみたい…
特筆すべきはEXOでしょう。まだ日本でCDデビューを果たしていないにも関わらず、31.8万人を動員するというのは、一体どんなマジックなのでしょうか…。頭が混乱してきました。
他意はないのですが、単純にわかりません。不思議すぎます。
また、SHINeeの売り上げが一番多いように見えますが、実は前作の売り上げは3万5千枚程度。なぜ急にブレイクしたのか、まったく実感がないので、本当に不思議でしたが、どうやらCDにコンサートのチケットを付ける売り方を始めたようですね。
さすが、韓国アイドルは学習能力が高いというか、目ざといですね～！EXILEグループのお家芸までフォローですか、とちょっと不思議な気分になりました。*3
あとスーパージュニアのファンの忠誠心の高さにもビックリですね。
CDを買ったファンの7割～10割が東京ドームに駆けつけ、そのうち半数以上が２日間とも参戦しており、１年を通すと平均して１人4回以上コンサートに訪れているようです。単純計算ですが、やっぱりすべての公演を見たい！というのがアツいファン心理というものですよね。
それか、Mr.childrenやゆずみたいに、「シングルCDは買わないけどライブには行きたい」というライトなファンがめちゃくちゃ多いのかもしれませんが、その可能性はあまり高くなさそうです。
それにしても本当に不思議です。
私は自分を、わりとアイドル界隈に対して感度の高い方だと思っていて、韓国アイドルに特別思い入れはないものの、少女時代やKARAを楽しんだり、東方神起の人気はすごいなぁ～と感心したりしていたのです。
なので、「おまえが年取って感覚が鈍くなってんだよ」と言われればそれまでかもしれませんが、SHINeeだのEXOだのと言った最近の韓国アイドルについて、本日に至るまで全く「ブレイクしている実感」がなかったため、こんなにCDが売れていてライブに人が集まっていたなんて、単純にビックリしているのです。*4
まぁでも、ふつうに考えて、彼らくらい楽曲がよく練られていて、PVもオシャレで、ダンスも歌もルックスもレベルが高ければ、ファンが多いのは当然のことかもしれませんね。
調べれば調べるほどよくわからなくなってくるので、この話はここで終わりにしたいと思います。
ところで、日本で韓国アイドルと同じようなことをやっているアイドルはいるの？
日本でアイドルと言えば、ジャニーズとAKB48グループが二大巨頭にあげられると思いますが、日本のメインストリームであるこの２グループは、明らかに世界的流行の文脈からは外れています。
私はそこが面白いところだと思うし、日本人は基本的に「わび・さび」*5の民族なので、無理して外国の流行を後追いする必要もないのでは、と思いますが、かと言って「私は精神的に成熟しているので世界で流行っている最先端の音楽が聞きたい！」という方々もいるでしょう。恐らくそういった層に韓国アイドルが受けているのではないかと思うのですが、では、日本にはそうゆう「世界最先端音楽」のフォロワーであるアイドルは皆無なのでしょうか？
アイドルという文脈に入れて良いのかわかりませんが、私の思うところ、EXILEファミリーはそういったものを意識されているのではないかと思います。*6
個人的な好みで言うと、私は彼らの量産型っぽく聞こえるAtsushiリスペクトなボーカルと渋谷のキャメロット前にたむろっていそうなイケイケドンドンなリア充ムード*7が苦手なので、あまり好んでは聞きませんが、流行っぽい音楽を日本人好みのポップスに落とし込んでいて、ダンスも見ていて疲れるような「ガチさ」よりもノリを重視していて、幅広い層の老若男女に人気があるのがよくわかります。
EXILEファミリーが今絶好調に売れていることで、韓国アイドルの影が薄くなっている部分はあるかもしれませんね。
一方で、ライジングプロダクションのDA PUMPは、こうゆう「世界の流行を意識した本格派アイドルグループ」の第一人者ですね。
ISSAという稀有な存在の素晴らしさは、舌筆に尽くしがたいものがあります。
それにしても、シンプルと言うにも程があるPVですね…。同じavexのようですが、EXILE関係とのお金のかけ方のシビアな差を感じました。
あとは彼らの後輩のw-inds.や三浦大知が、本格的に世界の流行を参照した音楽をやっていて、そこそこ成功していると思います。一応私の好きなLeadも、本格派の流れを汲んでいますが、あまり世界の流行を追いかけている感じはしなくて、日本の歌謡曲に根差した湿っぽさが強いですね。そこが魅力でもあるのですが…。
このあたりはCDの売り上げがだいたい3～5万枚程度っぽいので、売上で言うと韓国アイドルに完敗しているようです。ただ、w-inds.は昔取った杵柄で、アジアで一定の人気を保っていて、たまにそこそこの規模のアジア公演も行っているみたいです。
個人的に最近気になっているアイドル・Prizmaxなんかは、ミニマムでオシャレなニューエレクトロっぽくて良いと思うんですけど、見事に売れてないようですね…。
このグループはメインボーカルの２人がそれぞれサイパンとミャンマー出身という異色グループで、曲やダンスも自分たちで作っているあたり、なんとなく日本的なアイドル像とは一線を画している気がします。
女の子のアイドルだと、まぁ一番近いのはPerfumeなのかな？
でも、彼女たちはいかにも日本的なアイディンティティを持っているので、やっぱり「世界の流行のフォロワー」という感じはしないですね。
E-girl'sとフェアリーズは、ダンスや歌のセンス的には良い線行っていますが、いかんせん「日本のアイドル」像にとらわれすぎているところがある気がします。
あとはモーニング娘。'15がEDM路線でやっているのもなんとなく見ていて、楽曲は和製EDMつんく節って感じで結構おもしろいと思うんですけど、彼女たちの描くアーティストイメージがちょっとチグハグに感じるんですよね。個人的な好みの問題もありますが、メンバーの卒業と新加入を繰り返して定期的に素人を補充しているグループが、本格派アイドルを目指すのは少し違うのかな？と思います。少なくとも、流行のフォロワーという文脈には乗ってない感じです。
いずれにせよハロプロは、本気で本格派になりたいのか大衆に受ける歌謡曲路線でいきたいのか、何がしたいのかいまいちよくわからないのが残念です。℃-uteもアンジュルムもJuice=juiceも、パフォーマンスレベルの高さは間違いないし、アイドルとして面白い面もあると思うのですが、なんとなくアーティストイメージが定まっていないような、モヤッと感があります。でもそのへんの「ふわっとしたダサさ」が、ハロプロのアイディンティティなのかな？とも思います。
今後日本で韓国アイドルはどうなる？
どうやら、まだ実感はないですが、韓流ブームが下火になった今でも、日本で韓国アイドルが売れているのは間違いないようです。今後、彼らがさらにその勢力を広げていくのか、それとも徐々に収束へ向かっていくのかはわかりませんが、少なくとも現時点では、日本のアイドルにはカバーしきれていない部分を掬い取って、日本国内でも一定の需要を得ていると考えて良いのかな、と思います。
別に韓国人だからどうのこうのというのはないのですが、やっぱり顔は似てても外国人だなーとは思いますし、彼らが英語ならともかく日本語で曲を出すことに対して違和感もあります。しかし、日本に多くのファンがいて、彼らのCDがガンガン売れてライブにもバンバン人が集まっている以上、もはや今の日本音楽界は、「韓国アイドル」抜きには語れなくなっているのかもしれません。
日本独自の道を行って世界でなんとなく人気のあるアイドルもたくさんいるようですが*8、やっぱり世界的流行の波に乗っているアイドルは強いですね、と韓国アイドルを見ていてしみじみと思いました。
国家としての一貫性のある政策や先を見据えた支援の力も感じますし、何より各グループのブレインがすごくよく流行りの音楽とダンスを研究していて、頭が下がります。
しかし、あんまりフォロワーばっかりやっててもなんだかな、という気が個人的にするので、日本のアイドルにおしなべて「同じようなことをしてくれ！！」とはあんまり思いません。多様性があるのが大事なので、そうゆう部分はEXILE関係やライジング関係が担当して、それとは別にジャニーズとかAKBみたいな、日本にしかいないタイプのアイドルの面白さも貴重だと思うので、今後もその路線を貫いてほしいものです。
ただ、ダンスや歌に対するガツガツした姿勢とパフォーマンススキルのレベルの高さについては、ぜひ彼らを見習って頂けたら、と思いました。あと、PVのセンスもね…。
