非メジャーアイドルナビ

一般的に「非メジャー」に分類されるであろうアイドルを追跡するブログです

℃-uteはアイドル界のフロントランナーになれるのか?

久しぶりに私の心をとらえた新曲、Summer Wind

 ℃-uteハロー!プロジェクト所属の女性アイドルユニット。2002年にハロプロキッズとしてハロプロに加入。その後いわゆる「Berryz工房に選ばれなかった」メンバーによって、2005年に結成された。

℃-ute|ハロー!プロジェクト オフィシャルサイト

 

さて、℃-uteと言えば拙ブログでしつこく何度も何度も繰り返している通り、私が応援している二大アイドルの一角を長年にわたって占め続けているアイドルグループです。

個人的には℃-uteへの思い入れが強すぎて、あまり冷静に見れていない自覚があり、今まで積極的に℃-uteの記事を書くのは控えてきましたが、久しぶりに℃-uteが私の心にドストライクな新曲を出してくれたので、迸る情熱を抑えきれずに筆を取ってしまいました。

 

実は、最近の℃-uteの曲は、おしなべてすべて私の好みから大きく外れていたのです。

厳密に言えば、そもそも今まで℃-uteの曲で「超好き!」なものは数えるほどしかありませんでした。ですがハロプロの楽曲が私の好みにイマイチ合わないのは元からだったので、別に曲の良さをそれほど求めていなかったし、ついでに言うとハロプロの振付が大抵トンチンカンなのも承知していましたから、楽曲も振付も好みではないけど℃-uteの歌とダンスとパフォーマンス、そして彼女たちの真摯な姿勢が素晴らしいから、私はずっと熱狂的(?)に℃-uteを応援してきたつもりです。

だからこそ、私にとって℃-uteを楽しむ最大の山場はライブでのパフォーマンスであり、だから℃-uteが新曲を出しても「レパートリーが増えるね」くらいの感想しかなく、応援という意味でCDは買っていますけど、曲だけを聴くことはほとんどなく*1、もっぱらライブDVDやらyoutubeの動画やらで℃-ute鑑賞を行ってきました。

今思うと、私の℃-uteの楽しみ方は若干マニアックな部類だったかもしれません。

 

ちなみにハロプロのPVというのも、昔からずっと途中で目を背けたくなるくらい「ノーコンセプト・ノークリエイティビティ・ノーバジェット」なシロモノで*2、何年にもわたり「これがPVだ!」と言い張る事務所・レコード会社から「メンバーが時々アップになりながら踊るスタジオ風景動画」を提示され続けて、すっかり疲弊して、PVに対する期待度を限りなくゼロに近い数値まで落とし込んでいました。

ところが、悲しき雨降りくらいからなぜか劇的に℃-uteのPVが良くなり、ほんとに突然完成度が上がりすぎて何があったのかオロオロするレベルで(まぁ相変わらず低予算丸出しではありますが)、℃-uteの新曲を「PVを見るため」に楽しみにするようになったのは嬉しい変化でした。

実際、PVを見る楽しみがあるぶん、最近の℃-uteファンは恵まれているなぁと思います。*3

 

そして最近、長年世間からするっとスルーされ続けてきたと言える℃-uteが、苦節十年を経て、徐々に心地よい上昇気流に乗り始め、なんとなーく世間に見つかり始めたことを、私もファンの端くれとして実感はしていました。

愛理がRayのモデルになってからは、元からわりと多かった女性ファンがさらに倍増しましたし、岡井ちゃんがなぜか突然バラエティ枠で押され始めて、「ポスト矢口」という縁起がいいんだか悪いんだかわからないポジションに押し上げられ、世間での認知度が上がったことも大きいと思います。

こうゆう、「上り調子」「棒上げ」状態にあるアイドルを応援することほど、楽しいことはありません。まさにお祭り気分で、テレビや雑誌で℃-uteを見る機会が増えるたびに、誰彼かまわず「私流行る前から知ってた!!!昔からずーっと応援してた!!!先見の明があった!!!!」とドヤ顔で叫びたい衝動を必死に抑えていたわけです。

 

そんな順風満帆な℃-uteが、満を持して2016年4月20日にリリースした29枚目のシングルが、「何故 人は争うんだろう?/Summer Wind/人生はSTEP!」です。

 

最近ハロプロは、何かの願掛けなのか契約上の縛りでもあるのか、この「3タイトルA面」スタイルにご執心のようです。

個人的には、この「3タイトルA面」は本当にやめたほうがいいと思っていて、結局どの曲を推したいのかハッキリしろよとか、3本分のPVの予算を1本に集中してクオリティ上げればいいのにとか、それならもはやミニアルバム出せば?とか、今流行りの「選択と集中」って言葉を知らんのか?とか、色々言いたいことはあるのですが、一応一番最初に記載されているタイトルがリードトラックということになっているようです。*4

今回のリードトラックは「何故 人は争うんだろう?」という大仰な曲で、相変わらず私の好みからは大幅に外れた曲・振付・衣装となっており、まぁこれも℃-uteの幅を広げるという意味では良いのかもしれないですけど、「わかってはいたけど今回もチガウな…」と思いながらPVを見ていたのですが、2タイトル目のPVを再生した途端、私の心が久しぶりに激しく揺さぶられるのを感じました。

それが、「Summer Wind」でした。

 

℃-uteが模索する、「大人のアイドル」の在り方

www.youtube.com

このムード。この色気。
10年以上にわたって「プロ」の女子アイドルとして業界を下支えしてきた℃-uteだからこそ、そしてそんな彼女たちが成長して「大人の女性」になったからこそ、できる表現です。
歴代℃-uteのPVで出色の出来であるどころか、日本女子アイドル界においてもかなり上位に入る出来なのではないでしょうか。

 

このPVのテーマは、「温度のない夏」だとか。
正直言ってどストライクです。そうゆうコンセプトを待っていたのです。

 

なんだかんだ言ってAKB系列のPVがおもしろいのは、ふんだんにお金をかけていることもあるでしょうけど、何よりも確固としたメッセージ、コンセプトが確立されているからではないでしょうか。それが趣味に合わないコンセプトである場合も多々ありますが、それでも「ノープラン」でダンス風景+リップシンクをだらだら流されるよりは何千倍もPVとしての価値があると思ってしまいます。

最近の℃-uteのPVは、素晴らしい外注先を見つけたようで、まさにこの「コンセプト」が少しずつ確立されてきた気がして、本当に毎回楽しみにしていました。今回はその期待を大幅に上回る、素晴らしいPVでした。メンバーの個性を捉え、非常に効果的で印象的なシーンがいくつもありました。

ロケーションも完璧です。うまく言えませんが、白い壁が冷たい空気をうまく演出していると思います。

折りしも、最近私は「マジカル・ガール」という若干特殊な映画を見たばかりでして、映画の内容が少しオーバーラップしたこともあり、*5一層このPVの雰囲気が、ミステリアスで刺激的なものに感じられたのでした。

 

そして散々「ハロプロとは曲の感性が合わない」と言いまくってきましたが、つんく氏渾身の楽曲がものすごく良いです。

個人的な好みの話で恐縮ですが、私はそもそもマイナーコードの曲が好きで、さらに夏とか海とか一般的に明るいイメージのモチーフに対して、それを大きく裏切ってシリアスなムードを出してくるようなアイディアというものが、ものすごーく好きなのです。

今回の曲は、まさにどんびしゃりです。相変わらずオシャレになりきらないというか、「完全なスタイリッシュ」とは少し違う、演歌的な湿っぽい要素が曲・歌詞に入っているのも、今回ばかりは逆に効果的に感じます。

 

振付も今回はわりと大丈夫な感じでした。個人的な好みを上から目線で語るのも大変気が引けるのですが、本当にハロプロの振付は私にとって理解不能で、せっかく℃-uteはダンスうまそうなんだから、もっと違う振付を見てみたいなぁと常日頃からおもっており、そしてすでにほとんど諦めモードでもありました。厳密に言うと、今回のフリも、決して私の好みではないのですが、うまい具合に曲にハマッていると思います。

衣装も素晴らしいです。満点です。愛理と舞美にこのワンピを着せたのは誰ですか?個人的にお中元を贈りたいレベルで感謝しています。ヘアメイクも完璧。

そしてメンバーの表現力も、まさに「完成」されています。
キャリアを積み上げ、ここまでまさに「己の腕一本」でアイドル道を歩んできた℃-uteの矜持を強く感じます。表情や動きの端々に、彼女たちの自信が漲っていると思いました。今更歌唱力云々を言うのも気が引けるくらい、5人の声の表現が素晴らしいです。

 

そして私がこのPVから強いメッセージとして感じたのが、℃-uteは大人のアイドルとして今後も歩み続ける」という彼女たちの決意でした。


AKBが確立した、アイドル=制服という図式

 AKBの功罪は本当に色々あると思うのですが、そのうちの1つが、「アイドル=制服」という図式を確立してしまったことだと個人的に思っています。

それは自動的に、アイドルの寿命を定義してしまうことでした。つまりアイドルは高校3年生までで終わってしまうのです。制服を脱いだあとの道が、まったく提示されないのです。

AKB以後、雨後の竹の子のように本当にたくさんの、有象無象のアイドルグループが乱立しましたが、その多くが「制服」を衣装としていたことに、私はAKBの影響力の大きさを痛感したものでした。

元々「ロリ」志向の強い日本人の好みにピタリと合っていたのでしょうね。男性アイドルに比べ、元々女性のアイドルは現役として活躍できる期間が短かったと思いますが、AKBはさらにその期間を「制服」によって限定化してしまい、アイドルたちは実年齢が制服を着ていた時期を越えてしまっても、無理やり幼稚さを装い、「制服」を着続ける必要に迫られることになったわけです。

そしてどうしても「制服」を着続けられなくなったら、グループを「卒業」し、「女優」だの「歌手」だのと肩書をつけて、次の新しい道を模索しなければなりません。

 

蛇足ですが、ももクロも、「週末ヒロイン」というキャッチが今でもわりと根底にあると私は思っていて、こんな言い方はアレなんですけど、彼女たちの全盛期はそこだったのかなーと思います。

もちろん、ももクロはものすごく成功したアイドルの1つで、オリジナリティがあり、確固たるポジションを築き、今では「ライブアイドル」として唯一無二の存在感を持ち続けていると思います。だけど、彼女たちの輝きのピークは、リアルな「週末ヒロイン」であった時代なのかなと、懐古主義だとはわかっていても、思わずにはいられません。逆に言うと、それだけ当時の彼女たちが斬新で圧倒的なパワーを持っていたということなのですが…。

ももクロもわりと℃-uteに年代的に近く、そろそろ「大人」になる時期ですので、今後彼女たちがどんなアイドル像を見せてくれるのか、おおいに期待しています。

 

一方ハロプロは、歴史的にもAKBより古いですし、いわゆる「制服系」のアイドルではありませんが、そのフラッグシップであるモーニング娘。が、定期的にメンバーを入れ替えて新陳代謝を繰り返す看板襲名型のアイドルであるため、今まで本気で「大人のアイドルグループの在り方」という問題に向き合ってこなかったように思います。

モー娘。の黄金時代を支えたOGは、事務所に残る人もいれば残らなかった人もいますが、ほとんどが「タレント」や「女優」などの新しい肩書を得て、活躍の舞台を「アイドル」の現場から移してしまっています。

 

しかし、ハロプロキッズとしてローティーンの頃からアイドルとして活動を始めたベリーズ工房℃-uteは、素人の「成長物語」という側面が強かったモー娘。*6に比べると、1つのグループで着実にキャリアを重ねてきた、いわば「アイドルのエリート」であり、今までのモー娘。の卒業生たちとは少し違う、「グループ」としての将来を真剣に考えなければならない存在であったのではないかと思います。

そして彼女たちが名実ともに「大人の女性」になった時、2つのグループは対照的な選択肢を選ぶこととなりました。つまり、ベリーズ工房は「無期限の活動停止」を選んでアイドルとしての道から鮮やかに去り、一方の℃-uteは、新しい「大人としてのアイドル」の姿を模索する道を歩み始めたのだと、私は解釈しています。

 

℃-uteは新しい「大人のアイドル」像を示せるか?

 果たして℃-uteは、「制服」後の「大人のアイドル」像を確立し、その道を歩み続けることができるのでしょうか。

その答えはまだわかりませんが、今回の「Summer Wind」のPVを見て、私は1つの確信を得るに至りました。それはつまり、℃-uteはその道を今模索しているところで、「今後もアイドルとして成長し続ける」という強い決意を持っているだろう、ということです。

℃-uteには、今まで確実に積み上げてきたキャリアと、ファンとの絆があります。「優等生的でつまらない」という見方をする人もいるのかもしれませんが、正統派のアイドルとして、10年超の経験を持つ彼女たちに、全くブレはありません。℃-uteは常に、王道を行く。それこそが℃-uteの獲得したアイデンティティだと私は思っています。

今まで弛みなく成長し続けてきた彼女たちのことを、私は非常に信頼しています。きっと彼女たちは、今後も新しい大人の女性としてのアイドル像を私たちに提示し続け、アイドル界のフロントランナーになってくれるでしょう。

 

折りしも、マイマイのスキャンダルが今話題の文春に出ました。

個人的に、これをうまく本人たちとファンが消化することができれば、℃-uteはさらに高みにいけると思っています。

大人の女性にとって、恋愛は必要不可欠な要素です。もちろん「私生活をあまりさらけ出すべきではない」という観点から、スキャンダルはないに越したことはないですが、個人的には良い恋愛をして、さらに人間としての深みを増してくれたらいいなぁと思います。

 

℃-uteのこととなると冷静になれない私ですが、幼い頃から応援している彼女たちと、なんとなく一緒に年を重ねてきたような気がしていて、そして今自分が大人になって、彼女たちも大人になり、その上でなお「アイドル」という道を歩き続けていてくれることが、たまらなくうれしいです。

欲を言えば、今後も時々Summer Windのような私好みの曲を出してくれると嬉しいですが、彼女たちの力強いメッセージは非常に明快に伝わってきましたので、それだけでも十分です。

今後も末永く、今やアイドル界をけん引するフロントランナーになろうとしている℃-uteを、見守り続けていきたいと思った今日この頃でした。

*1:ipod℃-uteの曲はほとんど入れてないです

*2:変なカタカナ語ですみません。最近ルー大柴ごっこにハマっているもので…

*3:個人の好みの問題ももちろんあるとは思いますが、とりあえず、ハロプロはあなた方のフラッグシップであるモー娘。のPVにもっとお金をかけたほうが良いのではないでしょうか

*4:それなら他2曲はB面にすればいいのにと思うんですけどね…。本当に不思議です

*5:全然内容が似ているわけではないのですが、イメージがなんとなく重なる部分があるのです。個人的な感覚ですのであしからず。ちなみにこの映画、今のところ2016年上半期のベストです

*6:今現在はモー娘。の中心メンバーもエッグや研修生出身が多くなっているので、グループとしての体質が少し変わった気がしますが